アタッチメント理論について勉強してみた
アタッチメント理論
アタッチメントとは愛着と訳すことができる。元々は小さなものが大きなものにくっつく、付着するという意味だ。そしてアタッチメント理論とは、ヒトをはじめ霊長類や鳥類の幼体が誕生後まもなく、特定の成体に対して形成する結び付き、及びそのメカニズムに関する理論の総称。言い換えれば、「母親(養育者)の世話・養育を求める乳児の行動」に関する理論で、精神科医のジョン・ボウルビィによって提唱された概念だ。
ジョン・ボウルビィは1951年のWHO(世界保健機関)からの調査依頼により、以下の内容を報告してます。成育環境の影響の重大さについて、母性剥奪(マターナル・ディプリベーション)の観点からまとめられたもので、アタッチメントへの理解に、大きな影響を及ぼすきっかけとなりました。
基本理論の具体的内容は、親から離れて暮らさざるを得ない環境にある、様々な文化的背景をもつ子供たちを研究して、人生初期の重大な情緒剥奪は、様々な深刻な発達上の課題を引き起こすことを見出したものである。そしてその課題とは、共感性の欠如。非行行動等の行為障害、愛情の受け取りや提供に伴う困難さ、注意の調整不全などがあげられる。
ジョン・ボウルビィ以外にもアタッチメント理論の構築に大きく寄与した例があり、アンナ・フロイト(ジグムント・フロイトの娘)は、ロンドンで開設した戦災孤児の施設で観察された子供たちの情緒的な不安定さ、不眠、抑うつ、攻撃性などを観察。
ハーローは、アカゲテナガザルによるアタッチメントの研究で貢献。ミルクを持った針金でできた代理母より、ミルクを持ってない肌触りの良い毛布に覆われた代理母の人形にしがみつく結果からスキンシップによる情動調整の重要性を示唆した。
また、ジョン・ボウルビィは、ローレンツや、ティンバーゲンらの動物行動学の影響を受け、アタッチメントとは本能であると述べた。サルの世界において、実親が子育てに疲弊した時に、他のサルが子育ての肩代わりをする事例を引用した。そして、アタッチメントの対象は、母親や、それに代わる人物と捉えるようになった。つまり、養育者は母親・父親などの実親だけとは限らないこと。これは、「子供家庭福祉」「社会的養育」の理論的な根拠となり、社会的なネットワークの重要性を導き出したといえる。
また、生後1年間の後半において、保育者は安全基地としての役割があるとしている。そして、子供たちの心の中には、自分、家族、自分を取り巻く世界全体に対する捉え方の基盤が形成されることになる。これを「内的ワーキングモデル」と呼び、アタッチメント概念を構築した。このモデルが、その後の子供たちの内的な適応や、社会的適応に大きな影響を与えると捉えています。
アタッチメント理論のポイント
アタッチメント理論は、発達早期の子どもと親の関係性に限定されたものでない
アタッチメント理論の概念は、多くの研究者の知見が寄与し発展した
アタッチメント理論:ストレンジ・シチュエーション法
人は、ひととふれあうことで成長していく。これは多くの人が共有する考えだ。
Bowlbyが最初に示したアタッチメントの原義は、文字通り、生物個体が他にくっつこうとする(アタッチメントしようとする)こと。
Bowlbyは個体がある危機的な状況に接し、あるいは、そうした危機を予知し、恐れや不安情動が強く喚起された時に、特定の他個体への接近を通して、主観的な安全の感覚を回復、維持しようとする傾性をアタッチメントと呼ぶ。
加えて、Bowlbyはそれを、母子関係に限定されたものではないとしています。アタッチメント理論は、Bowlbyの主著「Attachment & loss」が「母子関係の理論」というタイトルで邦訳されたこともあり、アタッチメントを幼い子どもと母親との関係性で考えられてきた経緯がある。
確かに、それは現実的に母子関係から始発することが多いわけですが、Bowlbyは、基本的にアタッチメントをその主要な対象を少しずつ変えつつもゆりかごから墓場まで生涯、存続し機能し続けるものである。
それは、アタッチメントが単に(こどものような)弱者の(おとなのような)強者に対する依存的な関係のみならず、個体が自律性を獲得した後の対等の関係においても十分成り立ち得るという認識が潜んでいるとされている。
加齢に伴い、人は徐々に他者に対して物理的に近接しなくなるも、アタッチメントは、次第に危急の際に保護してもらえるという信頼感へと形を変えて生涯に渡り重要な意味を担い続ける
アタッチメントの観点は、子ども支援に留まらず、成人の社会福祉領域においても参考にできる概念。
支援者は、被支援者さんを見守り、受け止める“確実な避難場所”であると同時に外に出て行くため、あるいは新しいことに挑戦するための“安全基地”として機能するということだ。
コメント
コメントを投稿